障害者の法定雇用率の段階的な引き上げについて

1.障害者の法定雇用率の段階的な引き上げについて

障害者の雇用障害者について、一般労働者と同じ水準において常用労働者となり得る機会を確保するために、常用労働者の数に対する割合(障害者雇用率)が設定されていますが、障害者の法定雇用率が令和6年4月以降段階的に引き上げられます。

現行令和6年4月~令和8年7月~
法定雇用率2.3%2.5%2.7%
雇用義務人数43.5人に1人40.0人に1人37.5人に1人

 

令和6年4月からは常用労働者の総数が40.0人以上、令和8年7月からは常用労働者の総数が37.5人以上の事業主に、障害者を1人以上雇用する義務が生じます。

障害者を雇用しなければならない事業主は、①毎年6月1日時点での障害者雇用状況を7月15日までにハローワークへ報告しなければならず、②障害者雇用推進者の選任の努力義務が課せられます。

 

2.除外率の引き下げ

障害者雇用につき、機械的に一律の雇用率を適用することになじまない性質の職務もあることから、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度が設けられています。

この除外率制度は、ノーマライゼーションの観点から廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小することとされています。

令和7年4月に各除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられます。

除外率設定業種現行令和7年4月~
非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬・精製業を除く)、倉庫業、船舶製造・修理業、船用機関製造業、航空運輸業、国内電気通信業(電気通信回線設備を設置して行うものに限る)5%対象外
採石業、砂・砂利・玉石採取業、水運業、窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用に限る)、その他の鉱業10%対象外
非鉄金属第一次製錬・精製業、貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く)15%5%
建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業、郵便業(信書便事業を含む)20%10%
港湾運送業、警備業25%15%
鉄道業、医療業、高等教育機関、介護老人保健施設、介護医療院30%20%
林業(狩猟業を除く)35%25%
金属鉱業、児童福祉事業40%30%
特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く)45%35%
石炭・亜鉛鉱業50%40%
道路旅客運送業、小学校55%45%
幼稚園、幼保連携型認定こども園60%50%
船員等による船舶運航等の事業80%70%

 

3.障害者雇用における常用労働者と障害者の算定方法

〇常用労働者の算定方法

週所定労働時間常用労働者

(30時間以上)

短時間労働者

(20時間以上30時間未満)

対象外

(20時間未満)

従業員数10.50

週所定労働時間が30時間以上の労働者は「1」、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者は「0.5」としてカウントします。

 

〇障害者の算定方法

週所定労働時間30時間以上20時間以上30時間未満10時間以上20時間未満

(令和6年4月~)

重度の身体障害者210.5
身体障害者10.5
重度の知的障害者210.5
知的障害者10.5
精神障害者1(0.5)

当分の間1

0.5

精神障害者の職場定着を進める観点から、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者を1人とみなす特例措置が令和4年度末までとられていましたが、当面の間特例措置が延長されることになりました。

令和6年4月以降、週所定労働時間が10時間以上20時間未満であっても、重度の身体障害者、重度の知的障害者及び精神障害者については、雇用率上0.5カウントとして算定できるようになります。

 

4.法定雇用率を下回る場合

常用労働者と障害者の算定方法〇行政指導

障害者の雇用割合が法定雇用率を下回っている事業主に対して、ハローワークは「障害者の雇入れに関する計画」の作成を命じることができます。

以下の基準のいずれかに該当した場合には命令が発出されます。

①実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ不足数が5人以上の場合

②実雇用率に関係なく、不足数が10人以上の場合

③雇用義務数が3~4人の企業であって、雇用障害者数が0人の場合

雇入れ計画の作成命令が発出された場合には、命令発出後の1月1日から2年間の期間の障害者の雇入れ計画を作成し、計画に沿って、障害者を雇入れる必要があります。

作成された計画の内容が著しく不適当な場合や計画の実施を怠っている場合には、雇入れ計画に対する勧告がなされる場合があり、雇入れ計画に対する勧告がなされても、改善が進まない場合には企業名が公表されることがあります。

 

〇障害者雇用納付金制度

法定雇用率を未達成の事業主のうち、常用労働者が100人を超えるものについては、法定雇用率で雇用するべき障害者数に不足する人数1人につき月額50,000円の納付金を納付しなければなりません。

なお、納付金を納めたとしても障害者の雇用義務数が免除されることはありません。

 

5.まとめ

障害者法定雇用率の段階的な引き上げによって、令和6年4月からは40~43人規模の企業で、令和8年7月からは37.5~39.5人規模の企業で、障害者を雇用する義務が発生します。

また、令和6年4月からは120~199.5人規模の企業で、令和8年7月からは112.5~187人規模企業で雇用障害者数が0人の場合には行政指導の対象となるため注意が必要となります。

 

詳細は厚生労働省のホームページ等をご確認ください。

“障害者雇用のご案内”.厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf

 

“障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について”.厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf

 

“障害者の雇用に向けて”.東京ハローワーク

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/001454701.pdf